不思議な花~パフィオペディルム~
あまり目にかかることのない、珍しいラン
「パフィオペディルム」
大きな花に、つぼのようなものがついています。
その特殊な見た目や希少性から人気の洋ランです。
パフィオペディルムは、東南アジアや中国南部、インドの標高1000m程度の山地を原産地としています。
原産地では、野生種が少なくなっていて、ワシントン条約で取引が規制されている種もあります。
このパフィオペディルム、どうしてこんな見た目をしているかというと、
ちゃんとした理由があるんです。
まずは甘い香りでハナバチを引き寄せます。
この香りはハナバチにとっては、メスに選ばれるために必要だったりします。
引き寄せられたハナバチは、パフィオペディルムの花の周りをうろうろします。
パフィオペディルムのつぼの部分はすべりやすくなっており、
足を踏み外したハナバチはつぼの中に落ちてしまいます。
ハナバチはパニックになりますが、すぐに出口を見つけます。
見つけるというよりは、他に出る場所もなく、
1つの穴に誘導するように毛が生えているので、
ハナバチは誘導されるがままで出口へと向かいます。
この出口は、基部の部分にあり、
ハナバチが登っていくと、葯にたどり着きます。
この葯の部分には花粉の塊がついていて、
少し狭くなっています。
ハナバチはこの葯の部分からなんとか逃れようと、
暴れながら這い出します。
この時に花粉の塊がハナバチの背中に付着するようになっています。
そして、この花粉を持ったハナバチが別のパフィオペディルムのところに
行くことで受粉できます。
こうした受粉の方式をとっているので、パフィオペディルムはハナバチがいないと困ります。
前述の通り、ハナバチもメスから選ばれるためにパフィオペディルムの香りが必要なので、ハナバチもパフィオペディルムがいないと困ります。
これを相利共生と言います。
また、ラン科の植物に多い特徴ですが、
ラン科の花は種によって、奥に入り込める昆虫の大きさが決まっていたり、
誘うのに使う香りが、1種の昆虫にしか効果がなかったりします。
誘われる昆虫側も、ラン科植物の花の奥に入り込めるように身体が進化していたり、
その花の香りがないとモテないなど、対応しています。
これを共進化と言います。
ラン科の植物は、比較的新しい部類の植物で、
熱帯多雨林という植物がたくさんいる中で、
どう繁殖するかという選択を迫られた結果、
このような繫殖方法をとっています。
熱帯多雨林は植物の宝庫とも呼ばれますが、植物にとっては生存競争が激しい
地獄みたいな場所なのです。